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塩田武士 「罪の声」

ブックレビュー 塩田武士「罪の声」

2017年11月放送の「アメトーーク!『本屋で読書芸人』」

で紹介されています。

 

 

koromo8oo8.hatenadiary.com

 

1984年に起きた「グリコ・森永事件」をモデルとした小説。

 

「グリコ・森永事件」とは?

兵庫県と大阪府で起きた企業脅迫・誘拐事件。

標的にされたのはいずれも大手食品会社で

江崎グリコ、丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家、駿河屋の5社。

事件は未解決のまま時効を迎えた。

 

(あらすじ)

☆曽根俊也パート

京都で「テーラー曽根」を営む、若き二代目店主の曽根俊也は、

実母と妻と幼い娘の四人でささやかながらも幸せな日々を送っていた。

 

ある日、胃潰瘍で入院中の母に頼まれた荷物を取るために

母の部屋に入った俊也は古びたカセットテープとノートを見つける。

すでに他界した父の遺品であった。

 

懐かしさでテープを再生してみる俊也。

幼いころの自分の声で、

「ばーすーてーい、じょうなんぐーの、べんちの・・・」

と吹き込まれていた。

 

その自分の声には聞き覚えがあった。

TVの未解決事件のドキュメンタリーで聞いた。

 

まだ俊也が幼いころ、

関西で起きた未解決事件「ギンガ・萬堂事件」において、

犯人が脅迫に使用した音声だった。

 

亡き父が、そして幼いころの自分が、

犯人グループの一味だということだろうか・・・。

 

☆阿久津英士パート

大日新聞大阪本社文化部記者の阿久津英士は、

社会部の事件担当デスクである鳥居から呼び出された。

 

昭和・平成の未解決事件の特集を組むことになり、

大阪本社では「ギンガ・萬堂事件」を担当することになり、

阿久津も取材班のメンバーに選ばれたのだという。

 

鳥居は「ロンドン在住の東洋人の男」が関係者であるという情報を入手しており、

阿久津は早速ロンドンに飛んだが・・・。

 

以下、ネタバレや史実に関することが書いてあるのでご注意ください。

 

曽根パートと阿久津パートが同じ「現代の関西」

を舞台にそれぞれ進み、交互に描かれる。

 

作者の塩田さんは、1979年兵庫県生まれで、

2012年まで神戸新聞社で記者をしておられた方。

 

グリコ・森永事件を実際身近で感じ、

新聞記者としての経験を経てのこの作品なので、

文章にリアリティがあって、ぐいぐいと引き込まる。

 

「曽根パートと阿久津パートは一体いつ、どのタイミングで交差するの!」とか、

「これは本当はドキュメンタリーなのでは・・・。」とか、

「塩田さんと大日新聞のモデルであろう毎日新聞は真実にたどり着いているのでは・・・。身が危なくならないのだろうか・・・。」などなど、

 

小説の中身だけではなく、

いろいろなところにまで気をまわしてハラハラしてしまう。

 

モデルとなった「グリコ・森永事件」に関しては、

「グリコ・森永を中心にいくつかの食品会社が脅迫されて、

青酸入りのお菓子が実際に店舗に置かれて、

『かい人21面相』と名乗る犯人グループが、

おもしろおかしい口調で何度も脅迫文を送ってきて、

キツネ目の男が関係しているようで、でも未解決に終わった。」

というのが精いっぱいの知識。

 

でも小説では本当にきめ細かく事件の全容を追っているので、

これはモデルとなった事件のことも知った方がおもしろく読めるなあ、

と思ったので、途中で本を閉じて

しばし元の事件についてのいろいろな記事を読んでいました。

 

モデルとなった事件も、

実際子供の声を脅迫の音声に使っていたとか、

事件によって起きてしまう枝葉のように広がる痛ましい出来事があって、

記事を読んでいて苦しくなってしまう。

 

そしてその知識を併せて読み進めてゆくと、

小説の方は犯人グループの正体にたどり着く。

 

なんていうか、

思っていた以上に事件の闇が深いというか、

 

一般人が触れてはならぬ、

そして存在すら知らない、

黒い海のような沼のようなものがこの世にはあるのだな、

と思った。

 

そして、

その黒い海が知らぬ間に

自分の生きる場所を浸していたとしたら、どう立ち向かえばいいのか?

 

脅迫音声に声を使われた子供は俊也を含めて3人。

 

残りの2人は今、どこで何をしているのか?

そしてなぜ俊也が事件に関わることになってしまったのか?

父は犯人グループの一員だったのか?

阿久津は真相にたどり着くことはできるのか?

 

真相は正直読んでいて辛かったけど、

現代パートは「ハッピーエンド」になるのだと思う。

 

読み応えがあって、一気に読んでしまいました。

同じくこの事件をモデルにした小説、

「レディ・ジョーカー」も近いうちに読みます。

 

 

 

 

   
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