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田舎暮らしと本と映画。

邦画と本のレビュー。旅と神社と美しいものが好き。

映画 「あん」(ネタバレあり)

映画

映画レビュー「あん」

ネタバレありです。

 

 

監督 河瀨直美

原作 ドリアン助川「あん」

 

 

出演

樹木希林 永瀬正敏 内田伽羅 市原悦子 

浅田美代子 水野美紀 太賀 兼松若人 ほか

 

(あらすじ)

下町の小さなどら焼き屋「どら春」

 

雇われ店長の千太郎(永瀬正敏)は皮はまあまあ作れるが、あんは業務用を使用。

お客は近所の女子中学生。

 

常連客の一人である中学生・ワカナ(内田伽羅)は、母(水野美紀)と二人暮らし。

母は子育てには興味がなく、高校に行かずに働けと言われている。

 

そんなある日「アルバイト募集」の張り紙を見て、

一人の女性・徳江(樹木希林)が働きたいと訪ねてきた。

 

76歳という年齢を聞いて追い返した千太郎だったが、

再び訪ねてきた徳江が置いていった徳江作の粒あんを食べ、

あまりの美味しさに徳江を雇うことにする。

 

美味しい粒あんが評判になり、店は行列ができるようになる。

 

そんなある日、店のオーナー(浅田美代子)が訪ねてくる。

徳江がハンセン病患者ではないかという噂が流れているのだと・・・・。

 

 

女優・樹木希林の存在感と実力に圧倒される映画。

いつもはちゃきちゃきとした希林さんなのに、

この映画では柔らかで、繊細で、

壊れてしまいそうな小さなおばあちゃんです。

 

ワカナを演じる内田伽羅さんは希林さんのお孫さん。

新人ながらどっしりとした存在感。

パパそっくり!

 

そして、どら焼きテロされます。

何度も流れる、どら焼きの生地をばしばしと裏返すシーン、

柔らかなあんがそっと乗せられるシーン、

 

すっごく美味しそう・・・・。

私は見終わった後、ホットケーキを焼いてしまいました。

 

満開の桜で始まって、満開の桜で終わる映画。

四季の風景がとても美しい。

店の外の風景で、出来事から出来事の間の月日が推察されます。

 

ワカナくらいの年の頃、ハンセン病にかかり、

それからずっと療養所で暮らしていた徳江さん。

 

あんを作る技術は療養所の「お菓子班」で学んだ。

食べるのは療養所の中の人だけ。

 

療養所で結婚をして子供を授かったが、産むことは許されなかった。

生まれていたら千太郎くらいの年齢。

 

現在は療養所の外に出ることも許されて、

散歩の途中に「どら春」を見つけた・・・。

 

前半は事情も知らずに見ているのだけど、

後半で徳江さんの事情を知った上で、前半を振り返ると胸がぎゅっとする。

 

満開の桜の中、散歩をしていると甘い香り。

自分の子供と同じくらいの男性が一人でどら焼きを焼いている。

とても悲しそうな瞳で。(千太郎もまたワケありな人なのです)

その瞳はかつて療養所で隔離されていた自分と同じ瞳だった。

 

人生で一度でいいから働いてみたい、

あん作りならできる、あそこでなら働けるのかもしれない、

自分が作ったものが、たくさんの人に食べてもらえるのかもしれない。

そんな思いを抱えての冒頭の場面なのだなあ、と思うと胸がぎゅっとする。

 

「私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。(中略)

何かになれなくても私達には生きる意味がある。」

後半の徳江さんの言葉。

 

東日本大震災のときにすごく考えたことがあって。

現地にボランティアに行かれたり、多額の寄付をする人がいるなかで、

「自分には何もできない」と、無力感を感じて苦しむ人をたくさん見た。

 

人それぞれ持っている器があって、

その器に合った行動ができればそれでいいと思っている。

 

大きな行動ができる人はもちろん素晴らしいけど、

自分の生活をきちんと過ごして、

余力でできることがあればすればいいのだと思う。

自分を満たすことができない人は他人を満たすことはできない。

 

最小単位の

「そこに優しい気持ちを向けること」でも貢献なのかな、と思う。

 

徳江さんは過酷な環境においても、

人生をちゃんと味わって、生きていた。

また、ラストシーンの千太郎も、

今の自分にできる一番まっすぐな生き方を選択していた。

 

何か「大きな役割」のようなものは果たしていないかもしれないけど、

二人の「生命」は輝いている。

 

こういうメッセージ性の強い映画を見ると、

直接貢献できるような行動をすべきなのかなあ、と思いがちだけど、

自分の器に合わせて、それについて知ってみようと思ったり、

優しい気持ちを向けるところから始めたらいいのだ、と最近は思っています。

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