ブックレビュー 宮部みゆき「悲嘆の門 下」
私は新書で読んだのですが、
現在は文庫版が出ています。
読むのに支障があるようなネタバレはないつもり。
上巻のレビューはこちら↓↓
「悲嘆の門」は、宮部さんの既刊「英雄の書」の続編になるそうなのですが、
私はそちらはまだ読んでいませんが、今のところは支障がないです。
(下巻のあらすじ)
連続殺人鬼の魔の手は、
ついに主人公・孝太郎の周辺の人々にも伸びてきた。
孝太郎は事件の謎を解くために、
この世のものではない存在・ガラと取引をした・・・。
上巻の後半から、
「ファンタジー&スピリチュアルモード」に入りますが、
後半もずっとそんな感じ。
というか、後半はほぼこの世のお話ではないというか。
連続殺人事件の解決編になるわけですが、
謎とき方法も、その後の裁きも、人間界のものではなく、
正直な感想を書くとちょっとしらけた。
おもしろいはおもしろいのだけど・・・、
これがSF作家さんが書いたものなら素直におもしろいと受け止められた。
宮部さんが、ファンタジージャンルを書かれることも知ってる。
でも、この本の上巻は、
私が好きな、
現代社会の闇に焦点を当て、人の温かさに支えられつつ事件を解決してゆく、
宮部作品らしさがあったから、下巻にも期待していたのです。
孝太郎と共に謎を解く、元刑事の都築さんが、
「どんな厄介な感情だろうが、嫌な記憶だろうが、自分の中に呑み込んで、
溜め込んで、それと一緒に生きていくのが人間だからだ。」
「こんな真似は法治国家じゃ許されることじゃないんだ。」
と、作中で言ってくれて、
「そうだそうだ!!
そういうことを言ってくれる人がこの作品内にいてくれてヨカッタ!!」
と、ページをめくる手に力がこもったものです。
事件はものすごく後味の悪い感じで終わるのかと危惧していたけど、
モヤモヤは残りつつも、最悪の状況は防げてよかった。
孝太郎と都築さんは、もう二度と会うことはないと、
お互い思っているようだけど、また出会ってほしいな。
二人の身体に残ってしまった微量の不思議なチカラと共に、
また違う事件を解決してほしい。
そうなんです。
ブーブー言ってるけど、もし続編が出たらきっと読みます。