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田舎暮らしと本と映画。

邦画と本のレビュー。旅と神社と美しいものが好き。

映画 「母と暮せば」(ネタバレなし)

映画

映画レビュー「母と暮せば」

(ネタバレありません)

 

監督 山田洋次

出演 

吉永小百合 二宮和也 黒木華 加藤健一 浅野忠信

広岡由里子 本田望結 小林稔侍 辻萬長 橋爪功

www.youtube.com

(あらすじ)

伸子(吉永小百合)は、長崎で助産師として暮らしている。

家族は、夫、長男、次男、の四人家族。

しかし、夫は早くに結核で死亡、長男は南方で戦死。

以降、医学生の次男・浩二(二宮和也)と二人静かに暮らしてきた。

 

しかし、1945年8月9日。

長崎医科大学で授業を受けていた浩二は原子爆弾により死亡。

 

それから3年が過ぎた。

悲しみに耐えながら浩二の婚約者であった町子(黒木華)と

支え合いながら生きている伸子の元へ、浩二の亡霊が現れた・・・。

 

 

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公開日に舞台挨拶のライブビューイングがあったから、

「二宮さんがお目当て」の方はすでに鑑賞を済ませていたのだろうか。

 

館内はほとんどが、50代以上と思われる人々だった。

 

映画というより一本の舞台を生で見せてもらったような、

それくらい俳優さんの演技がひとりひとり深くて、重厚な作品でした。

 

戦争を経験していない自分に、

「何故戦争がいけないのか」と問われたら、

漠然と、

「罪のない命も奪われてしまう」「国が貧しくなる」など、

今まではそんな風に答えていたのだと思う。

 

でもこの映画を見てわかった。

 

戦争の悪とは、

「『幸せ』であることに罪悪感を感じるようになってしまう」

ということなのだと。

 

誰かを愛おしく思う、誰かに愛おしく思われる、

美味しいものを食べ、心が喜ぶ文化にも触れ、

赤ん坊が子供になり、少女は女になり、少年は男になる。

 

そんな誰もにとって自然に「幸せ」と思えること。

 

そんな「幸せ」であることに、人々が罪悪感を感じれば、

「自己犠牲」や「我慢」が尊ばれ、

「不幸な環境に耐え忍ぶ」ことが美しいことになる。

 

そんな考えが、

縦軸(過去~現在~未来)にも、

横軸(自分~家族~近隣社会)にも、

またたく間に広まり、

 

国全体が「幸せは罪悪だ」

という指針で生きるようになってしまう。

 それこそが戦争の一番の悪だと、この映画を見て思った。

 

浩二が亡くなって3年目の命日。

他の遺族と共に、海が見える墓地で死者を弔う伸子と町子。

 

浩二は骨どころか遺品すら見つからなく、

死を受け入れるまで今日までかかった。

 

照りつける太陽、長崎の青い海、みずみずしく町子の肌に浮かぶ汗。

優しい会話を交わす伸子と町子。

そんな美しい映像を流しながら、じわりじわりと当日の回想が始まる。

 

「その日」に何が起きるかもうわかっているから、

観客は恐ろしくて、悲しくて、いたたまれなくなる。

 

冒頭のこの場面で既に涙が止まらない。

周囲の観客も涙をぬぐっている。

以降、会場内は映画が終了するまでずっと、鼻をすする音が聞こえていた。

 

こんなに会場中が泣いているのは、東日本大震災をテーマにした、

「遺体 明日への十日間」以来だと思った。

当時のレビュー↓↓

映画 「遺体 明日への十日間」 - 田舎暮らしと本と映画。

 

当日命を落とした人だけでなく、

数日後に苦しみながら命を落とした人、

数年後に被ばくの影響で亡くなる人もいる中、

 

生き続けている登場人物たちが、

「命があるだけでありがたい」とか、

幸せになること、生きていることに対して「ごめんなさい」と、

苦しむ姿に心が痛くなり、上映中に何度も泣いた。

 

生き残った人たちも十分に、

ひょっとしたら亡くなった人たち以上に、苦しんでいるのだ。

 

生き残った誰もが罪悪感や貧しさの中にいる、

身体の一部を失った人もいる。

大切な人を失ったことにより、

誰かが生きていることに対して憎しみを抱いてしまう人もいる。

 

そんな「人間が人間らしく生きることができない」異常な状態。

戦争は本当に恐ろしい。

 

戦争の恐ろしさも十分に伝わるけれど、

でも映画自体は優しいファンタジーで、とても、とても、美しい作品です。

 

「嵐」という日本だけでなく、海外でも人気があるアイドルグループの、

二宮さんがこの作品に出演したことにより、

国内の幅広い年齢層の人や、海外の人たちにも、

見てもらえるのだと思うと、ちょっと安堵した。

 

この映画を見て、ひとりでも多くの人に何かを感じ、考えてもらいたい。

たくさんの人に見てもらいたい映画です。

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