両親が他界したことにより児童福祉施設で生活することになった小学生男子と、
同じ施設で暮らす子供たちとの日々。
児童福祉施設を舞台にした小説は読んだばかりだった。
有川浩「明日の子供たち」
有川氏の描く「世界」はいつも優しい。
「人生思い通りにならないこともあるけど、それでも生きることは素晴らしい」
と、背中からふわりとブランケットをかけられたような気分になる。
朝井氏の描く世界で奇跡は起こらない。
子供が子供を産んでしまったような母親はだらしないままだし、
夫の虐待を静観していた母親は、自分の心の穴を埋めるために再び母親になりたがる。
どんなに成績が良くても、経済力がなければ大学には行くことができないし、
いじめに対して正々堂々と立ち向かっても、いじめは続く。
それでも登場する子供たちは、ひとりひとり淡々と自分の立場と向き合っていた。
子供ができる精一杯の知恵を絞り、言葉を紡ぎ、現状を受け入れ、立ち向かおうとしていた。
だから読後は不快な気持ちにはならなかった。
この子供たちなら未来を切り開くことができるだろうと思えたから。
この子供たちに、
「血の繋がった『家族』を愛しく思えることより、
血は繋がらぬのに『家族』になった相手を愛しく思えることの方が
すごいことなのかもしれないね。」
と伝えたい気持ちになった。