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朝井リョウ 「何者」

ブックレビュー 朝井リョウ「何者」

 

空き時間ごとに読むことのできるライトノベルのような作品だと思っていた。

 

突然ふわりと入って来た作者を、

そのまま自分のパーソナルスペースにまで入れてしまったら、

「びびってんじゃねえよ。

インプットばかりしてないでアウトプットしていくんだよ。」

と、一転して喉元に刃を突きつけられた気分。

 

就職活動中の大学生たちの、日常と葛藤と希望と闇と。

 

「twitter風」の登場人物紹介や作中でのやりとりは、

いかにも現代風で気楽に読むことのできる文体だった。

 

登場人物たちの青くて痛い日々にいたたまれなくなって、

何度か本を閉じて休憩した。

でも自分にとっては過ぎ去った日々、

どこか高いところで見守るような気持ちだった。

 

この作品を読む人は、

きっと登場人物の誰かに自分を重ねてしまうのではないか。

 

かつての自分はこんな風だった。

いや、今でも・・?

 

「観察者」として生き、他人を評し、笑うことはたやすい。

 

そして、

「高い場所から観察をし、汚れることを避け、

さらりと生きようとすることこそ、上手な生き方で高等な人間すること。」

 

そんな風に考えている人間なんて、この世にはごまんといる。

 

そうじゃないんだ。

頭の中の「傑作」を一人一人が吐き出すんだ。

 

みっともなくても、不完全でも、

匿名じゃなくて、

「あなた」や「わたし」のものをとして吐き出していかなくてはならないのだ。

 

恥をかいて、自分の不完全さと向き合って苦しんで、

そこで初めて自分の姿を闇の中に「ぼうっ」っと浮かび上がらせる、

「スタート地点」に立てるのだ。

 

そして作者はきっともうその葛藤と苦しみを経て、

闇に浮かび上がった、

「自分の輪郭」をなぞることのできる段階に来ているのだなあ。

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